陰陽五行の話



気と心理(2)

(柿木昇治前日本生理心理学会会長との会話)

娥影:柿木先生、前回は気とモチベーションについてお話いただきましたが、モチベーションの次には行動が来ますよね!

柿木:気が早いね、その前に「人の存在」についてお話しましょう。 人の存在が、動物でも他の人に対しても大きな影響があるのです。 Effect of personと言ってね、私は大学院を終了して米国のジョンスホプキンス大学の精神科医で生理学者のガント教授のもとで「人の影響」という研究をしたのです。

娥影:ジョンホプキンス大学は私も訪問したことがあります。世界で最先端の医学部があるということで有名ですよね。そこでの研究ですが、精神科と生理学それぞれどんな内容なのですか?

柿木:精神科は、内科、外科、耳鼻科などの治す方の臨床医学のことです。一方、生理学は解剖、免疫、生化学などの基礎医学のことです。はい。そこでの研究は犬を使って動物実験をするのですが、一種の条件反射ですね、人がいると恐れないという。
例えば、電気ショックをかけるのですが、横に飼い主とか、よく慣れた人がいるとその犬の心拍数も血圧もあまり上がらないのです。反対に誰もいなくて犬が孤独感を持っているときは心拍数も血圧も上がる。まあ、心臓血管系の研究なのですがね。さらに耳の辺を愛撫しながらだと、ショックをかけてもほとんど影響を受けないという結果が出ていますよ。

娥影:しかし、そばに安心できる人がいるというだけで、こんなに影響があるとは思いませんでしたね。

柿木:そうだね、君のように一人でなんでもできると思っている独立心旺盛な孤独女性は、あるショックを受けた場合、ひどく落ち込むかもね。僕の友人でメリーランド大学のリンチ教授がこれをさらに発展させてね、末期患者や交通事故で瀕死の患者に話しかけたり、手を握ったりと、声は出せないけれども心臓は確実に反応するのです。
だから、病院で看護婦さんが「おばあちゃん、元気」って声かけをするのは大事なんだよな。必ず反応しているのだから。

娥影:だけど最近は、家族の関係が希薄というか一人暮らしの人が多いじゃないですか。

柿木:米国の生活状態をやはり調査したのですが、一人暮らしと夫婦暮らしでは心臓血管系の死亡率が一人暮らしの方が2倍以上高いのです。

娥影:文句を言いながらでも喧嘩しながらでも夫婦は共に鴨の如くひっついているのがいいのですね、理想は。でも、ふふ、夫婦でなくても気をゆるせる人がそばに居ればいいということか。

柿木:形式はともかく、それほど人の影響は大きいのです。よく若い人が携帯電話で話しているけど、それもいいけど本当は面と向かって話をしたり、お茶をのんだり、face to faceが大事なのよ。

娥影: 問題ありますね、最近の私たちの生活。また日本人は欧米と比べてそのボディランゲイジの表現が少ないでしょ。

柿木:そうです。社会性の問題もありますしね。ですから日本では、ごく近くに、人がいるということが大事であり、人の存在が現実の福祉問題におおいに関係します。 (次は老人の心理と気について)