陰陽五行の話



氣を調える方術

「医心方」によると、氣を調える方術を習得するなら万病を治すとされています。夜中すぎから正午前までがよい。
なぜならその間は生の氣となるので調えることができるから。床に厚くて柔らかい敷物をしいて仰向けになって両手は握固(あくこ)といって4本の指で親指を中にいれ固く握ります。握固は魂(こん)の門をおさえ魄(はく)の戸をしめて、人の魂魄(こんぱく)を安定させる所以があります。そして両手両足をだらりと開いた感じで体を伸ばします。大の字とはいかないまでも楽に寝て、枕の高さは頭と体が同じくらいにすること。そして息は鼻から吸い込みいっぱいになったら止め、またさらに吸い込む。そのまま氣を体内にできるだけ長くとどめて、我慢できなくなるまで待って、口から少しずつ吐き出す。
自分の体内の氣に神経を集中して体中の様々な部位から、足先から手先から腹の底から頭のてっぺんまで氣をめぐらすと氣の流れを感じ取れる。大地と一体になれる。普段人間は自然に息をしているから、このように意識して呼吸するのは難しいものです。慣れると神秘の世界に包まれることになる。自分の呼吸が波のように打ち寄せて満潮になりやがて、引き潮のごとく引いていくのが感じられるようになります。

座禅の目的もこの呼吸法にあります。8回吸って、4数える間氣をとどめて、8回で息を吐き出す。これを40分間結跏趺坐(けっかふざ)・半跏趺坐(はんかふざ)で続ける。その間、思考は停止し、あるのは打ち寄せては出て行く氣の感覚のみです。
さて、あとはその時心をどこにとどめるか…。 握固: しっかりと終日握っていれば邪氣も、あらゆる毒氣も体内に入ることができないとされる。生まれたばかりの赤ちゃんはそうだ。いつも手を固く握っている。また霊柩車と出くわすと握固する習慣もこのことからきているのでしょう。